住宅の購入というのは多くの方にとって人生の一大事で、長く大切に住み続けたいと考えているでしょう。その大切な住宅の外壁にクラックひび割れがあったら大問題です。
ですが、焦ることなくご自宅の外壁クラック(ひび割れ)を良く観察して下さい。大きさによって原因も補修方法も大きく異なります。
まずは必要な知識をつけてから対応するようにしましょう。
外壁に起こる「クラック」とは
外壁に起こる「クラック」は平たく言えばひび割れです。
ひび割れは使われている外壁材の種類や、築年数、建っている場所によって原因が違います。
また、大きさの段階によって補修方法も異なります。
外壁に起こるクラックの原因
外壁に起こるクラックには様々な原因が考えられます。
ここでは、原因として挙げられる事例について説明しましょう。
施工不良
原因の1つとして施工不良が挙げられます。
新築の物件や外壁塗装工事を行って数年でのクラックはこの確率が高いと考えられます。
経年劣化
外壁に塗布された塗料は、日照や雨によって日々劣化していきます。経過年数により塗膜が劣化し、外壁の表面にクラックが発生することがあります。
外壁塗装は一般的には10年に一度と言われてますが、この経年劣化を防ぐことが主な目的です。
時期に差し掛かった住宅にお住まいなら、目視で確認して見ましょう。
車や電車などによる振動
車や電車など近隣で起こる大きな振動によってもクラックは発生します。
家は設計段階から一定の振動に対応するようには作られています。
ただ、想定以上の大きな振動や、一定方向から継続的に振動を与えられると許容を越えてしまいます。大通り・電車に面している家や、近隣で大きな振動があるような工事があった後は外壁を注意して見ておくと良いでしょう。
地震
もちろん、地震でも外壁にクラックは発生します。
日本は地震大国ですのでどこに住んでいても可能性はあります。
大きな地震の後はもちろん、体感できる地震があった後は念のために外壁を確認することをお勧めします。
構造の問題
構造の問題によってもクラックは発生します。
家という箱は住環境によってさまざまなひずみを発生させています。想定外に一点に負荷が掛かることによってクラックが出来てしまうこともあるのです。
また、家が建てられている地盤に弱い箇所がある場合にも起こりえます。地盤沈下による軽微な傾きでも外壁塗装にひび割れは発生します。
外壁に起こるクラックの種類
外壁に起こるクラックはその大きさによって名称が変化します。
ここではクラックの種類について説明していきます。
ヘアークラック
髪の毛のようなクラックをヘアークラックと言います。
外壁の塗膜がひび割れを起こす一番小さなクラックです。
具体的には幅が0.3mm以下の小さなひび割れをヘアークラックと呼びます。
構造クラック
構造クラックは幅0.3mm以上、深さ0.5mm以上のひび割れのことを言います。
原因はいくつか考えられますが、見つけた場合は早急に補修して下さい。
これ以下の大きさの場合、緊急性はありませんが点検を依頼することをお勧めします。
原因によっては早急な改善が必要になるからです。
乾燥クラック
乾湿クラックは外壁材の表面にモルタル仕上げ(乾湿工法)を施した際、乾燥が不十分なままでその表層に塗装した場合に起こるクラックです。
クラックの幅は狭く、外壁が汚れた状態だとなかなか発見できません。
ご自宅がこの工法で建てられていた場合は、クラックが起こる可能性があると知識として知っておいた方がよいでしょう。
縁切りクラック
外壁塗装を行った際に面の途中で作業を中断した場合、再度塗装を開始した塗膜の継ぎ目の箇所にひび割れが生じることがあります。
基本的には面ごとに塗装を行いますが、天候など何らかのアクシデントにより中断せざるを得ない場合に起こってしまいます。
また、塗り忘れた箇所を後から塗装した場合にも起こりうる現象です。
外壁のクラックを放置したらどうなる?
では、外壁のクラックを放置したらどうなってしまうのでしょうか?
ここでは、放置した際に起こりうる現象について詳しく解説します。
外壁の剥がれ
まず、初期段階の現象としてクラック周囲の塗膜が剥がれます。
クラックから雨水が染み込み、周囲の塗膜を剥がしてしまいます。
雨漏り
外壁がモルタル外壁の場合、表層の塗膜にクラックが生じていだけなら良いのですが、内部のモルタルにまでひび割れができてしまうと雨漏りが発生します。
具体的にはクラックの幅が1mm以上で深さがあるときは浸水の可能性があります。屋根だけでなく、外壁からの雨漏りもあり得るのです。
内部の腐食
さらに浸食が進めば構造体そのものに悪影響を及ぼします。木造建築の場合は内部の木材の腐食、鉄筋コンクリート造(RC造)なら鉄筋に影響が出るでしょう。
鉄や木材にとって水気は大敵で、少量・短期間なら外壁材の下地に敷かれている防水紙が防いでくれますが、長期間になると防水紙そのものが腐食します。
クラックは長い間放置することによって構造体にまで深刻なダメージを与えてしまうのです。
他の不具合の発生
クラックを放置して外壁材の内部に雨水が浸透した場合、外壁内部のカビはもちろん内壁に内側からカビが発生する場合があります。
室内にカビが発生することで健康被害まで発展してしまいます。また、構造が鉄筋コンクリート造(RC造)だった場合、長期間水分にさらされた鉄筋からが錆び強度を下げてしまます。
さらには、鉄筋が錆びたことで体積が増え膨張することで周囲のモルタルを押し出し「爆裂現象」と呼ばれる外壁の破壊さえ起こしかねません。
外壁のクラックの補修必要度チェック
クラックにも様々な大きさがあり、その大きさによって補修の要・不要、補修内容が異なります。
不必要な工事をしないためにも、必要な工事をするためにも必要度をチェックしておきましょう。
0.3㎜以下:経過観察
クラックが0.3mm以下のヘアークラックの段階では緊急性はありません。表面の塗膜に生じたクラックであることが想像されるからです。
ただ、発見した場合には場所を覚えておき、定期的に確認することをお勧めします。大きくなった場合には対応が必要となります。
0.3㎜以上:点検を依頼
幅が0.3mm以上になった場合には点検を依頼して下さい。
構造クラックである可能性があります。放置して大規模な補修になってしまう前に対処しましょう。
1㎜以上:点検と必要な補修を行う
クラックが1mm以上の場合は補修が必要となります。クラックが構造クラックなので、外壁表層だけでなく、下地や構造体についても専門家に点検してもらう必要があります。
適切な補修が必須です。
3㎜以上:すぐに補修が必要
早急な補修が必要です。
長期間に渡って内部に雨水が侵食している可能性があり、構造体に深刻なダメージを与えていることも否定できません。緊急事態です。
速やかに補修しましょう。
自分でできるクラック応急処置法
近年、DIYが世間でも一般的となりご自身で作成したり補修したりする方も多いでしょう。
ここでは、ご家庭でできるクラックの補修方法を説明します。
ただ専門知識がない場合はヘアークラックやそれに近い小さなクラックに限ります。大きなクラックについては専門家に依頼するようにしましょう。
セメントの塗布
セメントが付着する外壁材の場合、セメント粉を塗布することで補修することができます。セメント粉にはチョーク式とスプレー式の2種類があります。
どちらの場合もまずはひび割れ個所の汚れを取り除き、防水材を染み込ませます。
チョーク式の場合はチョークをひび割れ個所に直接塗りこんでいくのですが、ある程度力が必要になります。スプレー式の場合はスプレーでセメントを吹き付けるだけですので力は必要ありません。
ただ、噴射したセメントが周囲にまでかかってしまいますのでマスキングテープなどで防護した上で補修することをお勧めします。
シーリング材の注入
1mm程度のクラックにはシーリング材を充填することで補修することができます。
ワイヤーブラシ等で周囲を掃除し、シーリング材を塗布します。よく乾かした後に周囲と目立たなくなるよう塗装を施します。
深いクラックの場合は、工程も増え必要な工具も多くなります。
- 周辺をU字またはV字に削って溝を作る。
- 周囲マスキングテープで養生
- 溝部分にプライマー(下地材)を塗布
- コーキング材を注入しヘラでならす
- コーキング材が乾く前に養生のマスキングテープを剥がす
- よく乾かしてから塗装する
コーキング材にも種類があり、ある程度の専門知識や技術が必要になります。
こちらは上級者向けと言えるでしょう。
外壁のクラック補修を依頼する業者の選び方
では、外壁にクラックを見つけてしまった場合、どのように補修業者に依頼すればよいのでしょうか。
一括見積もりを取る
インターネット上の見積もりサイトで一括見積りを取るという選択肢があります。
手間をかけずに無料で見積もりが取れるというメリットがある一方、デメリットも存在します。1つには、返答のあった工務店の評判が分かりません。
もちろん、優良業者から返答がある場合もありますし悪徳業者の数も多くはないでしょう。ただ、評判が分からないまま契約することで施工不良が起こってしまうリスクは上がります。
また、施工不良が起こった場合でも一括見積りサイトはトラブルに関与しない場合がほとんどです。
これも大きなデメリットと呼べるでしょう。
地域に根付いた業者に依頼する
評判が分かるという観点から地域に根付いた業者に依頼するとい手段もあります。
近隣で同様の工事をした工務店、昔から評判の良い工務店など住んでいれば得られる情報があるはずです。インターネットで近隣の工務店を検索して口コミを集めることもできます。
また、近隣の業者なら別のトラブルがあった際に相談しやすいというメリットもあります。情報を集めて良い工務店を探すのは良い選択肢です。
補修や見積もりの詳細を教えてくれる業者を選ぶ
実際に見積もりを依頼する際には数社から合い見積もりを必ず取りましょう。
その中で、現在の状況・補修の有無・補修方法・補修内容の見積もりなどを詳しく説明してくれる業者を選ぶことが大切です。
工事に納得できることはもちろん、工事を信用することができます。
また、専門的な知識を得ることもできるので詳細な見積もりは大切です。
信頼できる業者を選ぶ基準の1つになるでしょう。
外壁のクラックの補修費用・相場
外壁のひび割れの処理相場は1㎡当たり1,700円~2,500円で、足場が必要ない場合の合計は1~5万円・必要な場合は1~50万円となります。
緊急性があるなら別ですが足場が必要な工事の場合、外壁全体の塗装も同時に行った方が費用対効果は良くなります。一般的に外壁塗装は10年に1度と言われます。
必要な工事なら、部分的な補修をするのと同時に全体のメンテナンスも検討する方が経済的にお得になります。
補修を検討した機会に全体の外壁塗装の見積もりを一括で取得することをお勧めします。
クラックの原因によっては補修費用が無料になる場合も
ご自宅を所有している方は火災保険に加入している方が多いでしょう。
台風・大雪・豪雨などの自然災害が原因の場合、保証対象になる可能性があります。
地震保険に一緒に加入している場合も同様です。火災保険の知識のある業者に依頼し、保険の相談をすることをお勧めします。
状況によっては無料になる場合もあります。
外壁のクラックは一括に見積もりをして安全な対処を
クラックについて勉強になりましたか?
見つけたクラックの大きさによって取る行動の判断基準は理解できたでしょう。
発見が遅く補修に緊急性のある場合は急いで補修工事行って下さい。
緊急性のない場合は大きなメンテナンスと合わせて一括で見積もりし補修することを検討しましょう。
焦ることなく、放置することなく大切なお家に安全な対処を行いましょう。